第五章 月の涙、枯れ果てて

 4


  伝令の第一報が届いてから三日後、第二報の伝令が、ルダ城に到着した。国境付近の小さな町での小競り合いの後、スイズの小隊が勝利した形で、西方の町へと一旦引いたものの、駆けつけたダダスの援軍と再び衝突したという。その場所はサンツ渓谷を含む一帯での事であり、今度は小競り合いというよりは、大砲隊すらいる本格的なスイズ軍とダダス軍の戦いになっているという。それを聞かされたルヴァは、居ても立ってもいられず、休暇を願い出た。それは、故郷のある南部地域への視察を兼ねて……ということで許可された。  
 そして、しばらくの暇乞いをする為にルヴァは、リュミエールの元を訪れた。

「故郷に行かれる……のですか? 何時?」
 リュミエールの表情が見る見るうちに曇っていく。それを心苦しく思いながらルヴァは「南部へ向かう次の駅馬車が出るのは明後日ですので」と答えた。
「ご家族がご無事でありますように……」
 リュミエールは優しげな笑顔を見せてそう言ったが、やはりルヴァがしばらくの間、留守にすることが寂しい様子だった。
「ザッと南部の様子を見て、家族の無事を確認したらすぐに戻りますよ」
「ええ。お待ちしていますね。私の周りは一気に寂しくなってしまいましたから……」
 溜息と共にリュミエールはそう言った。
“一気に寂しくなった?”
 ルヴァはその部分を気にかけ、“え?”というように首を少し傾げた。
「スイズから同行してきた側仕えの女たちが昨日、国に帰されました。……いえ、自主的に帰ってしまったと言った方が正しいでしょうか。文官も武官もいつの間にか減っているように思います。近々、この賓客の館から 、ルダ王家の皆様と同じ城の塔内に移るように言われました。その方が安全だからと」
「そうですね……その方が安全ですね」
 このような状況と言えど、王子の世話をするべき側仕えの女たちが帰国?……ルヴァは、リュミエールがそこまで軽んじられていることに憤慨やるせない思いを感じながらも、差し障りのない言い方で自分の感情を誤魔化した。
「馬で帰られるのですか? もし良ければスイズから持参した馬が何頭かあるのでお使いになって下さい。いずれも足の強い馬です」
「お心使いありがとう。けれど駅馬車を乗り継いで行くんです。表だっての視察じゃありませんから。あくまでも休暇扱いで故郷に帰ることになっています。それに途中から砂地がずっと続きますから、砂漠馬でないと越せませんし」
「そうでしたか……。では、せめて発たれる時、お見送りしたいのですが、いつ頃行かれるのでしょう?」
「いいえ。出発は朝が早いのですよ。夜明けの頃なんです。少し温かくなってきたとはいえ、朝は随分冷え込みますから、どうか見送りは気になさらないで下さいね。両親の顔を見たらすぐに帰って来ますよ」
 ルヴァが念を押してそう言うとリュミエールは、安心したように頷いて「では、道中のご無事、祈っておりますね」と言った。
 
■NEXT■

 読みましたメール  あしあと ◆ 聖地の森の11月 神鳥の瑕 ・第二部TOP