第五章 月の涙、枯れ果てて

 3


 ルダ王城にある文官の執務室棟に、南方からの伝令が到着したのは、それから一週間の後。寒さがようやく底から脱した頃だった。早馬で駆けつけたのは南部に在駐している地方文官だった。彼は、ルヴァたち文官のいる部屋に入ると、王と執政官たちに取り次ぎを頼むと、その場に座り込んだ。
「一体何があったんだ?」
 水を持って駆けつけた文官に、伝令は、息を切らせて言った。
「南部の鉱山町で、スイズとダダスの小隊同志で諍いが……」
 伝令の言葉に、その場にいた文官たちが立ち上がった。
「何だって! どういうことだ?」
 伝令は、水を飲み干し、呼吸を整えた。
「ルダとダダス国境付近の鉱山地帯は、採取した鉱物を一旦、ダダス側に運んでから、その半分を換金してルダ政府に支払うことになっているだろう」
「ああ、長年の取り決めでそうなっている」
 文官の一人が答えた。
「荷積みをしている時に、駐屯していたスイズの小隊が本当にきちんと半分をルダに払っているのかどうか判ったものじゃないと執拗に因縁をつけたらしい。それが発端となったんだ。小隊とは言っても百人からなる。小さな地方の町はあっという間に火の手の中だ。私はその連絡を受けて第一伝令として駆けつけた。追って、第二、第三の者が続報を持ってくると思う」
 男の言葉に、それを聞いた文官同志は互いに顔を見合わせた。
「おい、ルヴァ、お前は南部の鉱山町の出身じゃなかったか?」
 年かさの文官が、横にいたルヴァに声をかけた。
「ええ。ですが私はサンツ渓谷あたりですので、国境付近ではありません」
 だが、そのダダス国境付近の町と故郷の村辺りは、さぼと遠い距離ではない。もし、ただの小競り合いですまなくなっていたら……、ルヴァの心の中に不安が広がっていくのだった。
 
■NEXT■

 読みましたメール  あしあと ◆ 聖地の森の11月 神鳥の瑕 ・第二部TOP