廊下にリュミエールとオスカーが壁にもたれて立っている。

「オスカー、なんだか嬉しそうだね? クラヴィス様が女王陛下とああいうことになって、邪魔がいなくなったと思ってんのかな〜?」

 オリヴィエはニヤニヤしつつオスカーに声をかける。リュミエールもキッとオスカーを見た。

「そんなんじゃないさ。俺は嬉しいんだ。皆が無事で。ジュリアス様とクラヴィス様の間には俺なんが太刀打ちできないほど強い繋がりがあるって事が今回の事でよくわかったさ。だがな、俺はこのサクリアの続く限りジュリアス様と共にあってジュリアス様がクラヴィス様と築かれた以上の関係になるんだ。身も心も支え合う、あの方にとってかけがえのない存在にな。わははは」

 オスカーは少し照れながら天井を見上げて言った。がリュミエールとオリヴィエは最後まで話を聞かずにスタスタと廊下を歩き出している。

「ま、待てーっ」

 オスカーが追いかけるが、二人は何やら話し込んでいて振り向かない。

「ね〜リュミエール。クラヴィスの事なんかスッパリ忘れてさ、ど? ワタシとさ」

 オリヴィエはリュミエールの肩に手をかける。

「オリヴィエですか……」

「安らぎはね〜あげられないけど、ワタシと一緒に寝るといい夢見せたげるよ」

「そうですね……ふふふ、それもいいかも知れませんね」

 リュミエールは少し笑って肩に置かれたオリヴィエの手に触れた。

「おっと! そういう事ならこの俺も黙っちゃいられないぜ」

 二人に追いついたオスカーはオリヴィエの手をリュミエールの肩から払いのけると代わりにリュミエールを抱き寄せた。

「アンタは〜、ジュリアスと身もフタも支え合う仲になるんだろ〜っ」

「バカ、身も心もだっ、ええい、リュミエールに触るな」

「アンタこそ、腰に手を回すんぢゃないよっ」

 言い合うオスカーとオリヴィエの間からスルリとリュミエールは抜け出た。

「お二人ともいつまでもそうしてらっしゃい、わたくしは先にティルームにまいりますからね〜早くしないとケーキを全部マルセルたちに食べられてしまいますよ」

 そう言うとリュミエールは衣装の裾をほんの少し持ち上げて小走りになる。

「あ、もう三時なんだね〜。本当だー。あいつらってば、怪我人のクセに食う食う〜」

「そういえば腹減ったな〜急ごう、今日のケーキは何だろう?」

「【ももこちゃん】らしいですよ、オスカー」

「何っ、本当かっ。それは急がなくてはっ」

 三人の明るい声が病棟の廊下に響きわたる。

 


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