ふたたび病室……。

「廊下は走るではないとあれほど! まったく、誰も彼も浮かれて……そなたのせいだぞ。そもそもそなたが己の立場もわきまえず陛下と!」

 ジュリアスの行き場のない怒りは傍らのクラヴィスに向かう。

「クックックッ……」

「何が可笑しいっ」

「いや……すまぬ。よかったと思ってな、生きていて。お前も私も」

「当たり前だっ、正義の味方が死んでどうする! 我らにはまだ山のような任務があるのだからなっ」

「相変わらずだな、その頑なさが……今の私には……」

「なんだというのだ?」

「心地よい……」

 とクラヴィスは小さく笑った。暖かな午後の日差しが、病室の白い壁にヴェールのような曲線を描き、二人を包み込んでいた……。

 

 トムサ・ルマクトーの死によって主星マフィアは事実上の壊滅をみた。

 が、悪は途絶える事がない。いかに聖なるサクリアの力を持ってしても

 そこに人の営みがある限り完全に悪を消し去る事は出来ないのか?

 サクリア仮面に許されたのは、束の間の休息だけなのか?


サクリア仮面2 完

……………以下、サクリア仮面3に続……かねーってば、もう。

あとがき
表 紙