ふたたび病室……。「廊下は走るではないとあれほど! まったく、誰も彼も浮かれて……そなたのせいだぞ。そもそもそなたが己の立場もわきまえず陛下と!」
ジュリアスの行き場のない怒りは傍らのクラヴィスに向かう。
「クックックッ……」
「何が可笑しいっ」
「いや……すまぬ。よかったと思ってな、生きていて。お前も私も」
「当たり前だっ、正義の味方が死んでどうする! 我らにはまだ山のような任務があるのだからなっ」
「相変わらずだな、その頑なさが……今の私には……」
「なんだというのだ?」
「心地よい……」
とクラヴィスは小さく笑った。暖かな午後の日差しが、病室の白い壁にヴェールのような曲線を描き、二人を包み込んでいた……。
トムサ・ルマクトーの死によって主星マフィアは事実上の壊滅をみた。
が、悪は途絶える事がない。いかに聖なるサクリアの力を持ってしても
そこに人の営みがある限り完全に悪を消し去る事は出来ないのか?
サクリア仮面に許されたのは、束の間の休息だけなのか?
★ あとがき ★
★ 表 紙 ★