クラヴィスに取り付けられた監視装置の電子音だけが部屋に小さく響いている。ジュリアスはどうしたものかと戸惑いながら、眠っているクラヴィスを見た。頭部に巻かれた包帯は痛々しい。左頬にはまだ微かに血の後が残っている。火傷をしたらしいクラヴィスの手の甲の包帯をジュリアスはそっと触った。あの意識の薄れて行く中で、クラヴィスと繋いだ指先から感じた安らぎのサクリアをもう一度確かめる為に。「ジュリアス……」
と眠っているはずのクラヴィスが目を開けて言った。
「なんだ、起きたのか……」
「いや、あまり皆が騒がしいので眠ったフリをしていた」
「騒がしくもなろう。そなた……まぁいい」
ジュリアスはわざと大きな溜息をつきつつ言った。
「フッ……」
クラヴィスが少し照れながら笑ったので思わずジュリアスも微笑み返してしまう。
とその時、そーっとドアが開いて、オリヴィエが入ってきた。
「あ、失礼……ショール忘れちゃってさ……邪魔してごめんね」
バツが悪そうにオリヴィエはそう言いながら椅子の上のショールを手に取ると、そそくさと出ていこうとした。
「う〜ん、アンジェリークが妊娠中だからって、ジュリアスと浮気かぁ。やるね〜クラヴィスも〜。内緒にしといたげるよ」
オリヴィエは笑うと背中の傷が痛むのか前屈みになって言う。
「違うっ、浮気などではないぞっ」
ジュリアスは出ていこうとするオリヴィエの背中に向かって怒鳴りつけた。
「えええっ、浮気ぢゃないのっ、マジなワケ〜、これってやっぱし不倫ってヤツ? うわ〜濃いねぇ、アンタたち〜」
オリヴィエはジュリアスとクラヴィスに弁解の余地を与えずドアをパタンと閉めた。
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