「オナカノコ……」

「パパ……」

 二つの言葉が他の守護聖たちの頭の中でグルグルと回っていた。聞いてはいけない事を聞いてしまったとマルセルとランディは天井を無言で見つめている。リュミエールはにっこり微笑みながらリンゴの皮を果てしなく剥き続けているが、こめかみの辺りが時折、ピクついているようである。ルヴァはターバンの中に手を突っ込み、ポリポリと頭を掻いた。ゼフェルはクラヴィスの点滴の落ちる速度を手元のボタンで無意味に調節している。当のクラヴィスは目を閉じて眠ったフリをしていた。

「そんなに泣いたらお腹の子によくないよ、きっと」

 妙に冷静なオリヴィエだけが、アンジェリークの背中をポンポンとさすってやると、そう言った。

「クラヴィス〜、寝たフリしてもダメ! アンタが最近サクリア仮面の行動をお休みしてたワケは判ったよ〜しかしまぁ……おめでとうって言うしかないんだけど、こりゃ面白い事になったね〜。ジュリアスに言ったらさぞかし……ねぇ、オスカー? あらっ、オスカー?? いないよ……すばやいね〜もうチクりに行ったか〜、チッ、ジュリアスがビックリするとこ見たかったのに」

 オリヴィエが笑いながらそう言うと、やっと自分を取り戻した他の守護聖たちは、順番にアンジェリークとクラヴィスに「おめでとう」と言った。溢れてくる涙を懸命に拭きながら女王は「ありがとう」と何度も繰り返して言った。

 クラヴィスは……布団をすっぽりと被ってしまい、本当に深い眠りに入ったようだった。


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