その時……サクリアーズ秘密基地の中に警報が鳴り響いた。コントロールパネルには「警報」の文字が点滅している。

「何事だっ、ルヴァ?」ジュリアスはルヴァを見る。

「あー、事件のようですねー、ちょっと待ってくださいね」ルヴァは何やらキーボードを叩く。

 パネルには主星ルアン市の地図が映し出され、一カ所赤く点滅している場所がある。ルヴァの横で同じように作業をしていたゼフェルが叫ぶ。

「大変だ〜、ルアン市の北東にあるチペ湖で遊覧船が転覆して観光客二百五十人が船内に閉じこめられている〜」

「何っ!」皆が一斉に驚く。

「ゼフェル、警報システムを設置して正解でしたねー、ではっ、サクリアーズこれより救援に出動しますっ」ルヴァは上擦った声で叫んだ。

「ジュリアス〜オレたちも行っていいだろっ、今は昼間なんだし、救援活動だし」

「よかろう、そなたたちも来るがいい」

「やったぁ〜僕、がんばりますっ」

「おーマルセルやろうぜ」

「誰かっ、私の肩飾りを外してくれぬか? 着替えられぬ〜」

 執務室から直接やってきたジュリアスはまだ守護聖の衣装のままだったのである。

「自分で脱げないような衣装を作るからだ……」

 と言いつつクラヴィスはジュリアスの肩飾りを外してやろうとすると、オスカーがそれを遮った。

「俺がしますっ」

「ほう? 手慣れたものだな……フッ……深い意味はないがな……」クラヴィスは何か面白くないらしい。

 

「早くして下さいよー、ヘリコプターの準備は出来ましたよ〜早く乗って下さい〜」

 ルヴァがそう言うとヤングサクリアーズは嬉しそうにヘリに乗り込んだ。

「乗ってみたかったんだ〜僕、窓際に代わってよ、ゼフェル」マルセルは遠足気分である。

「ちょっとアンタたち、もっと詰めなさいよ〜」

 続いてオリヴィエ、リュミエール、クラヴィスが乗り込む。ようやく着替えが済んだジュリアスとオスカーが続く。

「あっ、いけませんっ、このヘリは定員五名ですよー、誰が降りて下さい〜」

 ルヴァがオロオロしながら叫ぶ。

「後から来たヤツ、降りろよ〜」ゼフェルが言うと、ランディとマルセルも頷く。

「何を言うか、そなたたちこそ、降りるがよい」

「るせー、このヘリは重量制なんだよ、一番重いヤツが降りろよー」

 ゼフェルが言うと一斉に皆、オスカーの方を見た。

「な、何をバカな、元々このヘリはサクリアーズのもの、ヤングサクリアーズが降りろ」

「そうそう、若いんだから、走って行きな〜」

とオリヴィエはランディを押す。オスカーがヘリの反対側に回ってドアを開けると先に乗っていた三人が転げ出した。その隙にジュリアスは乗り込む。

「では、参りますよ〜オスカー早く乗って下さい」

 リュミエールは操縦席に座ってルヴァがハッチを開けるのを待っている。

「あー、では安全装置解除、第一ハッチオープン、サクリアエンジェル一号機発進っ、頑張って来て下さいね〜っ」

 ルヴァはせり上がってゆくヘリに向かって叫んだ。

「ちきしょ〜、ランディ、マルセル、こーなりゃバイクでチペ湖まで行こうぜ」

「あ、でもバイクは禁止だってジュリアス様が……まっ、いいか」

「え〜僕、まだ免許持ってないよ〜」

「マルセル、俺の後ろに載せてやるからさ」

「うん」

「急ごう」

 ヤングサクリアーズは秘密基地の階段を駆け上がってゆく。その背中にルヴァが声をかけた。

「あー、あんまり飛ばすんじゃありませんよ〜、信号はちゃんと守ってくださいよー」

 

 聖地の西側の山から轟音と共にサクリアエンジェル号が飛び立つ。

 その下をヤングサクリアーズのバイクがパラッパラッパーと音をたてながら走ってゆく。

 


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