「オレの出番だな……、オレのサクリアをおめーらにもったいないけど分けてやらぁ、ありがたく受け取れよ」とゼフェルがサクリアを放とうとするとランディがそれを止めた。

「よせよ、お前のサクリアって器用さを司るんだぞ、こんな若いうちから器用に生きるのはよくない、悩みながら遠回りしながら大きくなるんだ」

「だから、おめーはランディなんだよっ、バカ」

「なんだとっ」

「いいかよく聞け。オレのサクリアは、ただ単に器用に立ち回るとか器用にモノを作るとかそういうことだけのサクリアじゃないんだ、器用さはそのものの本質を見抜く深い洞察力、何ものにも捕らわれず真っ直ぐ真理を見抜く力、そこから始まるんだ、人を思いやる心、自分の辛さに打ち勝つ冷静な判断力に繋がるんだぜ、こいつらが忘れていたそういう心をオレが思い出させてやるぜ」

「ねぇ、それってルヴァ様に教えてもらったの?」

「マルセル〜っ、てめー、後で覚えてやがれ〜」ゼフェルは少年たちの前に歩み出て、両手をいっぱいに広げる。己のサクリアを抱え込むように。

「ほらよっ」と叫ぶと少年たちの頭の上でゼフェルのサクリアがはじけた。

 

「おれたち……ごめん、今までどうかしてた」とヨロヨロと立ち上がりながら少年たちがチョコボに言う。その瞳には嘘はない。

「よかったな、チョコボ、今日からは絶望のチョコボなんていうハンドルはやめろよ」

「うん、ありがとう、えっと鋼のホップさん」

「ホップはこっち、オレはステップっ」

「じゃ、またな、俺たちもう戻らなきゃ、皆仲良くしろよ」

「踏みつけたお花さんたち、ちゃんと直してあげてね」マルセルは笑顔で少年たちに言う。

 

 ヤングサクリアーズは夕日の中、校庭を横切って走ってゆく。その後ろを少年たちが見送っている。

「ヤングサクリアーズ……」

 その名が主星の中高生の間に伝わるのにさほど時間はかからなかった。


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