10 「いいじゃないの、正義の為ですもの」



 ゼフェルたちのヤングサクリアーズのデビューから三ヶ月……。

 主星のヤングの間ではもはや、ヤングサクリアーズはアイドル化していた。その正体は謎のままであるが、口伝えにああだこうだと仔細が広まってイメージ化されたキャラクターグッズなども出回っている。イジメなどの中高生にとって身近な事件を解決してくれるというのが親近感があったようである。確かにヤングサクリアーズが登場してからルアン市の青少年による犯罪が少なくなっている。登校拒否やイジメについては激減した。全部ヤングサクリアーズが解決したわけではない、が何かあればきっとヤングサクリアーズが来てくれるといった安心感が子供たちの心に余裕を与えているのだ。

 一方サクリアーズたちも、ルヴァが司令になり仲間が増えたせいもあって張り切っていた。

 サクリアーズ秘密基地・土の曜日の昼下がり……。

「なんか最近、平和ねぇ、あんましあこぎな事件も起きないしさぁ〜」

 オリヴィエが頬づえをつきつつ言う。

「まぁ、喜ばしい事ではあるな」オスカーも暇そうに言う。

「ワタシさぁ、新しい技考えたんだよ〜、早く使ってみたいな」

「へぇ、どんなのだ、またチャラチャラして踊り出すとか?」

「失礼だね、今度のはちょーっと強烈だよ〜オスカー、アンタ受けてくれる?」

「試し打ちか……いいぜ別に」

「そぉ、ぢゃ……クラヴィス、手を貸して」オリヴィエはクラヴィスの手を取る。リュミエールがそれをキッと睨み付けながら言う。

「何故、クラヴィス様の手助けが必要なのです?」

「二人の合体技なのよ〜ガ・ッ・タ・イ〜ごめんね、リュミちゃん」

 オリヴィエはリュミエールにウィンクする。

「わたくしもクラヴィス様との合体技、考えます」

「あら〜今のリヴァイアサンで充分だよ〜あれ以上キョーレツだったらワタシらの出番が無いよ〜」

「そうでしょうか?」

「そそ、欠点があるとすれば、リュミエールのはリミット技ってことかな〜?」

「ブチ切れなきゃ発動せんのか……」

「は? 何か仰いましたか? クラヴィス様」

「いや……何でもない」

「グタグタ言ってないでさ、いくよっ〜、ワタシの新技っ、パニック・イン・ザ・ダーク・ナイトメア・ヒット〜」オリヴィエはクラヴィスと合わせた手をオスカーの方向に向ける。

「ぐっ……う、ううわわわわわわわわ〜あああっやめろぉぉ」

「ど、どうしたのです、オ、オスカー」

「はぁはぁはぁ……」

「どう? 強烈でしょぉ〜悪夢を見せる技なんだよ〜私だけの力じゃイマイチだったんで、クラヴィスと組んでみたらば上手くいったんだ、で、どんな悪夢だった?」

「確かに……ああ、怖かった、古い井戸みたいなとこに落っこちる夢で……はぁはぁ」

 オスカーの息はまだ上っている。

「柔らかい布団の上に落ちて、助かった……と思ったら、それは、はぁはぁ、全部、女の髪の毛なんだぜ〜、井戸の中に髪の毛がギッチリ埋まってて、それでその髪がワサワサと俺をぉぉぉ〜、あー寒気がする」

「ふーむ……深層心理をえぐるような技ですねぇ、オリヴィエ、実に面白いですね」

 ルヴァは何やらメモを取りながら頷く。

 と、そこへジュリアスとゼフェルがブツブツ言いながら入って来た。

「ヤングサクリアーズの事は咎めはせぬと思っていたが、職務に支障を来すようではな」

「ちょっと会議に遅れただけじゃねーかよ」

「あらあら、またお小言なの〜」

 二人の様子を見て、オリヴィエは、にやりと笑うと、クラヴィスの手をそっと取り、小声で「パニック・イン・ザ・ダーク・ナイトメア・ダブルヒット〜」と唱えた。

 


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