その金融業者の自宅は成金のご多分に漏れず、高圧電流の通った高い塀に囲まれた豪邸である。まず電流を止めて塀を越え……という地道な定番の入り方にジュリアスは難色を示した。クラヴィスが止めるのも聞かずにジュリアスは「我々は主星を守るサクリア仮面である、これから成敗に出かける故、貴社のヘリコプターを拝借したい」と主星タイムズの特別報道班に掛け合ったのだった。
「そなたたちの新聞社のカメラマンの同行を許そう、我々の正体に差し障りのない程度に写真を写してもかまわぬ」
とジュリアスが言うと交渉は即成立した。
というわけで、ジュリアスとクラヴィスはヘリコプターで金融業者宅の真上に到着した。縄梯子がヘリから垂れ下がると、ジュリアスは颯爽とそれにつかまりバルコニーに降り立った。唖然とする金融業者とその妾らしき女に向かってジュリアスはツラツラと口上を述べる。
「サクリア仮面ゴールド見参っ、そなたの所行、あこぎにも程がある。金を借りた方にも非はあるというものの、そなたの取り立ての非道さは死に追いやられた男の娘の清らかな嘆願によって明白である。よってサクリアの名の元に我が裁きを受け……」
この段階で金融業者は館のボディガードを呼び隣室に逃げ出そうとしていたが、ジュリアスは尚も「その汚れた心に気高き楔を打ち込んでやろう、神妙にいたせぃ」と言葉を継ぐ。
クラヴィスだけが前に出て逃げようとする金融業者の襟首を掴み、迫り来るボディカードに必死で安らぎのサクリアを放っていた。口上を言い終わったジュリアスは、黒いマントをパッと脱ぎ、「我が光の攻撃を受けてみよ」というと両手を高く挙げ、次いで胸の前で腕をクロスさせるとパッと伸ばし、掌を相手に向けて叫んだ。
「ホーリー・シャイニング・アターック」
するとジュリアスの手の中から炸裂した光のサクリアが敵を包み込み、その誇り高きサクリアを浴びた悪者は己の行動を恥じてその場に無気力に座り込んだのだった。
「おお、ワシは今まで、なんとあこぎな事をしていたのか……神様お許しください、全ての財産は人の役に立つようにします、自殺に追いやった遺族の皆さんにもお詫びを〜警察にも自首します〜」と金融業者は泣き崩れた。
「わかればよい、ではさらばだっ」
ジュリアスは踵を返すと待機させていたヘリの縄梯子に飛び移る。その時、同行のカメラマンがシャッターを切りまくった。フラッシュの中、ジュリアスはカメラの方に向き直るとポーズを決め「よしっ、ヘリを出せっ」と叫んだ。
「あ、ちょっと、ちょっと〜それウチのヘリなんっすけど〜っ、置いていかないで〜っ」
カメラマンは叫ぶが、ジュリアスはおかまいなしに去って行った。
「あ〜行っちまった……あれ? 最初のサクリア仮面さん……も置いてけぼりですか?」
「サクリア仮面シルバーと呼んでもらおうか……」
「シルバーさん、メンバーが増えたんですね、なんだか派手ですね、ゴールドさんって」
「…………」
クラヴィスと主星タイムズカメラマンは、どうやって帰るかしばしその場に立ち尽くし悩んだのだった。
「お茶をもう一杯お入れいたしましょうか?」と言う側仕えの声でジュリアスは我に返った。
「いや、いい。もうそろそろ執務室に行かねば」
(その前にクラヴィスの所に寄って一応謝っておかねばなるまいか……)
ジュリアスは新聞を丁寧に畳み、傍らに置くとキリリと顔を元に戻した。
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