ウォン・セントラルカンパニーは、ウォン・グループ全体を統括し、広報、企画、情報収集などグループ内に有益な活動をするための非生産の会社であ り、謂わばウォン・グループ全体のブレーンにあたる会社である。社員数はザッと五百人程度。そのうち約半数以上が、他社へ出向していたり、出張や、既に前倒して休暇に入っている者たちで、毎年参加者はせいぜい百人程度なのだが……。
「うわ……今年なんか多いやん……」
 ホールのメインドアを開けたとたんチャーリーは思わず呟いた。すぐ後からやって来たザッハトルテは「さもありなん……ですね」と笑った。
「なんや? さもありなんって?」
「今年は、ジュリアスがいますからね。女性社員は、ほぼ全員参加しているようです」
「ははあー、ジュリアス様のプレゼント目当てかあ〜。ぷぷぷ、判る、判るで、その気持ち。たとえ社内忘年会の余興のプレゼント交換会の品でもジュリアス様自らがお選びになったものを欲しいちゅー恋心。切ないなあ〜」
「おや? 余裕なんですね?」
「大本命の恋人であるこの俺にとっては、別にそれくらいなんということもあらへん。そんな些細なことにジェラシーするほど子どもとちゃうで。ジュリアス様がモテモテなんは、むしろ俺にとっては喜ばしいことやな、ハッハッハ」
 腰を手を当てて笑うチャーリーの横で、ザッハトルテは「ふふん」と小馬鹿にしたように笑った。そして、「いや、ご立派です、寛大なことですね」と何か意味ありげにそういうと、彼は自身のスタッフたちのいる場所へと去っていった。

「さて、皆さん。社長と副社長が来られましたので、年忘れウォン・セントラルカンパニー大忘年会をこれより始めます。今年の料理は、立食バイキング形式ではありますが、主星エグゼクティヴグランドホテルよりご用意いたしましたあ」
 社員一同、大喝采。
「静粛に、静粛に。ではまず社長の挨拶からーー」
 チャーリーは、壇上に上がると、コホンと咳払いをした。
「えー、今年も一年、皆、お疲れサンでした。来年も頑張って働いてやー。……ということで俺の挨拶はお終いッ、さあっ。用意はエエかなーっ」
 いつも通りの極めて短い挨拶の後、チャーリーは持参していたプレゼントの包を掲げた。
 どよめきの後、またもや大喝采。食事の前に、例のプレゼント交換会をしてしまうのだ。各々が持ち寄ったプレゼントは既に回収されて、十個ほどの大きな布袋に収められている。その袋のひとつにチャーリーは 、自分のプレゼントを収めた。ジュリアスたちブレーンは、その大袋をサンタさんのように背負いつつ、各人の所を回わる。ジュリアスからのプレゼントがジュリアスの背負っている袋に入っているわけではないのだが、あっという間にジュリアスの回りに人垣が出来る。賑やかな音楽が一曲流れる間にプレゼントは、各人へと行き渡る。
「それでは皆さん、一斉に開けてください。その後は各自、お好きに食事をーーー」
 ガサガサという包みを開ける音に、笑い声が重なる。
「うわああっ、こんな下着どうしろと!」
 とTバックのパンツをトホホ感いっぱいの顔で振り回す男性社員。
「オイッ、ゴラァ〜。養毛剤って、嫌みか? 嫌みか?」
 と薄くなりつつある頭を撫でつけながら、翻訳部課長が言った。匿名より面白いから……という理由で送り主の名前を記したカードが添えられているので、彼はそれを読み上げる。
「送り主……情報部・サトウ……、クッ、リサーチに抜かりなしってか?」
 泣き真似をしつつ翻訳部課長は、それをポケットにしまった。送り主の方は、してやったりという顔をしている。
「さすが、恐るべし情報部……って誰に当たるかわからんのにドンピシャなトコによう当たったな……」
 チャーリーは笑いつつ、自分の当たったプレゼントを見る。女性アイドルのCDである。最近人気でCMにも出てるからなんとなく顔くらいは、チャーリーでも知っている。ジャケットの写真を見る限りでは嫌いなタイプではないが、おおよそ聞きたいとは思えないジャンルのものだ。送り主は、広報の若い男性社員。シュガーちゃん萌え〜(はぁと)とカードに書き添えてある。
「アイタタタ……、シュガーちゃん言うんか……この子……でもまあ確かに可愛い子や……」
 溜息を付きつつも、こういうことでもなかったら手にせぇへんシロモノや……と面白がるチャーリーであった。
 

■NEXT■


聖地の森の11月  陽だまり ジュリ★チャリTOP