クラヴィスは壺の中に差し出されたジュリアスの手に触れて確かめてみた。
「確かに……異常だ、このままでは、お前は涸れてしまう」
「女王陛下に何かあったに違いない。サクリアが出ている以上、私はここを離れる訳にはゆかぬ、そなた陛下の様子を見て来てくれ」
「わかった」
クラヴィスは薄ら笑いを浮かべつつ、ゆっくりと壺から離れて出口に向かった。
「急いでくれ……眩暈が……頼む」
ジュリアスは苦しそうに壺に寄りかかって懇願する。サクリアの過剰な放出は守護聖の精神と体に強く作用するのだ。
「ああ……」
と無気力にクラヴィスは言うだけでノロノロとドアを開ける。奥の間の重い扉を閉めるとクラヴィスは、ひとつ大きく息を付いて、衣装の裾を持ち上げると一気に女王宮殿に向かって走り出した。
挿し絵
藤山沢かの子様/BAR BAR BAR (当時)