聖域−−−誰の心の奥底にもそれは在る。
 
けれど、そのような処があることに気づかぬ者も多い。
自分の裡にある聖域を知っていたなら、愚かなことはできまい。
無碍に何の意味もなく花を手折ることすら、その聖域が汚れたと感じて耐えられまい。

戦場となったその平原の死屍累々たる有様に、私は『心の聖域』を想う。
 
私のそこは、暖かい言葉、癒される風景、美しい旋律、香しい匂い……素晴らしきものはもちろんのこと、もっと取るに足りない些細なものや、辛い出来事や……自分にとって忘れがたい何かしらのものが、いつの間にか思い出となり、浄化され、さらさらとした白い砂になって降り積もっている……そのような処だ。 それ以外にあるのは、天上から降り注ぐ穏やかな光のみ……。 

私の心の聖域、静謐なる処……今、それが、この悲劇を前にして澱んでいく……。

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聖地の森の11月 黄昏の森