◆聖地の天候は、主星南部のそれと連動している。年間を通じて穏やかな気候だが、四季の移ろいがあり、聖地でもそれに合わせて作物が収穫され、様々な行事も企画されている。 夏の強い日差しの日々が過ぎて、爽やかな風が吹く頃になると、自ずと体を動かすのが楽になり、それに合わせた様々なスポーツ大会が催された。

 私も幾つかに参加し、それ以外でも随分と乗馬を愉しんだ。飛空都市でも、音楽会や美術展が盛んに行われ、休日に館に居ることはほとんど無かったほどだ。

 賑やかな十月が終わり、十一月になると、聖地は静かになった。十二月に入ると、また何かと行事がある。執務面でも年度内に収めてしまいたいものや、長期の休暇に出る者たちの調整など、細かな指示を出せねばならぬ事があり多忙となるが、十一月は特にこれといった急ぎのものもなく、私も執務室の机の前で、娯楽の為の書物を開く時間ができるほどにゆったりとした日々を過ご している。それに肌寒さは人々を館の中へと呼び戻すのだろう。あれほど賑やかにしていたゼフェルも、週末は館に籠もって何か新しい機械ものを作り始めたようだった。

 十一月……私はこの月に特別の想いを抱く。

 それは五年前のこと……。

 

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