蒼天を穏やかな風が通り過ぎてゆく。小鳥たちはさえずり、朝露を含んだ蕾は、ゆったりと開こうとしている。
美しい聖地の朝……。
だが、この陰鬱な気分はどうだろう……。 ジュリアスは、微かに溜息をつき、分かれ道で立ち止まった。真っ直ぐそのまま行けば執務室棟に、右に折れれば王立研究院へと辿り着く。
“今日はやはり聖地へ留まろう……”
そう決心し、執務室棟へ向かおうとした時、背後からオリヴィエの声がした。
「おはよう、ジュリアス」
オリヴィエはそう言うと、ジュリアスに挨拶させる間もなく深刻な顔で近づき、小声で「ねぇ、嫌な感じの日だね」と言った。
「そなたも感じていたのか?」
「宇宙の不安定……は最近じゃいつもの事だけど。特に昨日あたりから何かこうモヤモヤと苦しくて嫌な気分さ」
「うむ……。今日は陛下のお側に控えておこうと思っていたところだ。皆にああ言いはしたが……」
女王試験も中盤を過ぎていた。女王候補たちの意志に沿うよう飛空都市へ向うことを第一優先とするように……数日前、ジュリアスは、自らの口から皆にそう伝えたばかりであった。
「今日はその方がいいかも知れない。ワタシもどうしようかと思ってたけど、朝一番に、ロザリアとの約束があってね。でも、ジュリアスが聖地に残るんなら安心だ。女王候補たちの事は
、ワタシに任せて。皆にもちゃんと言っとく」
オリヴィエは、軽く手を挙げて、微笑んだ。
「すまぬがよろしく頼む」
ジュリアスは、オリヴィエにそう言うと、執務室へと急いだ。 |