戯れに投げた小石の波紋の上に、枯れ葉が一枚落ちた。
 もう一つ、小石を投げようとしてクラヴィスの手は止まった。
(今、何と?)
 クラヴィスの手は行き場を失う。

(愛していると……言ったのか?)
 クラヴィスは、確認できないまま振り返り、アンジェリークを見た。
 大きな緑色の目がしっかりとクラヴィスを捉えていた。

 この沈黙に決して泣くまいとして、見開いたままになっている彼女の目の中。その中にに映る自分に、クラヴィスは溜息をついた。
 私も愛していると言えない自分に溜息をついたのだ。

「言っちゃった……あの……私……もうすぐ女王試験も終わりだし、言うことだけはちゃんと言わなきゃと思って……。だから、もう戻りますねっ」
 アンジェリークはそれだけ言うと、辛そうな顔をしているクラヴィスに背を向けて、走り去っていった。
 その場に残されたクラヴィスは、掌の中の小石さえも投げることも、手放すことも出来ずに、ただ立ち尽くしていた。

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