ふと、二人の男はオリヴィエをいじり回すのを止めて立ち上がると、金髪碧眼の男は、緑とは対面の壁の方に歩いて行った。黒い肌の男は緑の覗いている小窓の方へ……。 「続きをお相手いたしましょうか……」 その男は、小窓に緑の小窓に向かって、緑の悶絶を見透かしたかのように言った。 同じように問い掛けているのだろう金髪の男の方は、商談が成立したらしく、裸のまま扉の向こうに消えた。 「それともお一人で?」 と返答を迫られた緑、は乾いた長閑ら搾り出すように答えた。 「頼む……相手を……」と。 男は一旦、扉の向こうに消え、すぐに緑のいる【参】の部屋の扉を叩いた。緑が扉を開けると裸体のままの男が無表情に立っていた。深々と礼をして男は言った。 「なんなりと……」 年は自分よりも少し上くらいか……エキセントリックなその顔立ちは、印度人の血が混じっているのだろう……と思いながら緑は彼を寝台に誘った。緑の体の準備は十分だと察した男は、香油を引き出しから取り出した。そして、「自分でしましょうか? それとも旦那様にしていただけますか?」 と眉ひとつ動かさずに尋ねた。 「俺がしてやろう……」 緑は、男の手から香油を奪い取った。 (いつもオヤジに塗られているからツボはわかるぜ……) そう思いながら、緑は、侍らせた男の上に重なる。 「お前……印度人か? 名前は?」 緑は、その印象的な目を見つめつつ尋ねた。 「母親が印度人です。名前は……ここでは暁生と……呼ばれて……おり…ます」 「アキヲ……か……。ここだろう? どうだ?」 「はい……旦那様……」 まさぐる指はとめずに、緑は言葉を継ぐ。 「俺の事、知ってるか?」 「はい……今朝方、上海からいらした昌様のご子息様……かと」 「そうだ……内緒だぞ。俺がここに来た事……それとも反省して、ここで止めて部屋に戻ろうか?」 「そうなさった方が、後でお咎めはないか……と……」 攻められていながらも、暁生は冷静さを失わない。 「いまさら、むごい事を言うヤツだ……」 と緑は暁生を引き寄せて、奧に入った。 「あぁぁ……」 強引にしたのは緑の方であるのに、暁生は、口を閉じたままである。 深い快感の喘ぎを漏らしたのは緑の方だった。 だが、オリヴィエを見る前ならば、十分過ぎるほど満足させてくれたであろう相手の名前を、緑は呟かず、ただ心に映る、しどけなく眠るオリヴィエの長い睫を奮わせるためにだけ、緑は腰を動かし続けた。 |