「なんでえっ、ランディの説得のおかげと違うのかよっ!」

 ゼフェルはガックシと頭を落としているランディの背中に向かって呟いた。

「そのようですね……爆発すると言ってましたね、このフロアが?……ここを爆破すると海水が一気に流れ込んできますよ……」

 ルヴァは信じられないというように首を振った。二階は満潮時には水面下すれすれになる。

「もうすぐ潮が満ちてくる時間……外出口はこのフロアのどこかにあるはずです。私がここに連れて来られた時は船でした。海面とギリギリの所に出入口がありました。この階に降ろされたような気がします」

 ルヴァは回りを見渡しながら言う。

「では、我々は階下に急ぐ。そなたたちは、このフロアにあるらしい出入口を探せっ」

「ええ、ゼフェル、ランディ、出入口には確か、Zと記号が書かれていたと記憶します。その扉を探して下さい」

 ルヴァがそう言うと、ゼフェル、ランディ、リュミエールとオリヴィエたちは薄暗い廊下を身構えつつ進もうとした。

「階段はこちら側だ、降りるぞ」

 ジュリアスは装甲兵に追われつつ逃げる合間に見つけた下に続く階段にクラヴィスとオスカーを誘った。ジュリアスの後にクラヴィスが続き、階段を降りた。オスカーもそれに続こうとして後を振り向いた。

「オリヴィエ、しっかりしろよ。リュミエール、そっちは任せたぞ」

 オスカーは一番酷い怪我をしているオリヴィエと聖地に急ぐグループでは一番傷が軽く強い……と思われるリュミエールに声をかけた。

 その時、また階上で爆発する音が聞こえた。がそれはさほど大きな爆音ではなかった。ホッとして皆が顔をあげた瞬間、もう一度爆音。と同時にすさまじい爆風が走った。熱気のこもった爆風が今までのように上の階で起きたものとは違う事を証明している。階段を降りる途中だったクラヴィスとジュリアスはそのまま階下に転がり落ちた。岩壁や天井部分が崩れる音と塵煙が辺りを包み込む。

 爆発による煙が落ち着くと、リュミエールはゆっくりと辺りを見回しながら、起き上がった。下の階に続いていたはずの踊り場が上から落ちた天井のせいで、完全に遮断されてしまっている。その前にオスカーが弾き飛ばされて倒れ込んでいた。

「くそぅ……ジュリアス様……う、ゴホッゴホッ」

 オスカーは咳き込みながらも立ち上がる。

「オスカー、大丈夫ですか?」

 リュミエールはオスカーに駆け寄り言った。

「平気だ、それよりも皆は無事か……」

 リュミエールはオスカーの側にルヴァが頭を抱えて座り込んでいるのを見つけた。

「ルヴァ! しっかりして下さいっ」

「大丈夫ですよ……少し瓦礫の破片が当たっただけです、ゼフェル、ランディは?」

 ルヴァは服に降り注いだ岩の欠片を払いつつ立ち上がると、崩れ落ちた瓦礫の向こうにランディとゼフェルがお互いを庇い合うように伏せて倒れているのを見つけた。


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