第1章 「このカードからは悪の気配が漂う……」
★サクリアーズ地下司令本部
「新女王アンジェリークは日増しに、宇宙を統べる者に相応しい風格と聖なる力を自分のものにしてゆく……。補佐官のロザリアも持って生まれた美しさや賢さに溺れる事なく高みに登ってゆく。女性はその環境に戸惑い、苦しみながらも、自分の置かれた立場を把握し、馴染もうと懸命に努力する、そして変わってゆく。……ワタシたちもこのままじゃいけない。人とは違う長い時を生きると言う事に甘え、守護聖という逃れられない責務に負けて保守的な人生になっていない?」いつになく真剣に、そこまで一気に言うとオリヴィエは、じっと聞き入っている守護聖たちを見据えた。
「サクリア仮面として主星の悪と戦う事で、ワタシたちなりに歴代の守護聖とは違う事をしてきたのは自負できると思うよ。だけど最近、皆、なんだかダレてない?」
オリヴィエは今度はクラヴィスを見た。
「特にクラヴィス! あんたはサクリア仮面一号なのに、最近ちっとも活動してないね。そりゃ全員でかからなきゃならない程大きい事件もなかったけど。サクリア仮面シルバー死亡説が流れて主星の子どもたちがどれだけショックを受けたかわかってる?」
オリヴィエはそう言うと、隣に座っている他の守護聖たちにも視線を送る。
「オスカー、アンタもだよ。【ファイヤー!】だけじゃダメ、もっとこう【ファイラ】とか【ファイガ】とかアビリティアップ出来ないの? リュミエールもだよ。ついでに言わせてもらうけど、ジュリアス、あんたの技ってば、ホーリー系だから当たり外れが多いんだよ。効かない相手には、ヘの突っ張りにもなりゃしない。サクリア攻撃が効かない時の為に物理攻撃対策したらどう?」
オリヴィエが年長の守護聖たちに意見しているのを見て、ゼフェルはヘラヘラと笑っている。
「ゼフェル! アンタたちもだよ。最近、犯罪の低年齢化が進んでるんだから、今までみたいなワケにはいかないんだからねっ」
オリヴィエは仁王立ちになって声を張り上げた。
「そなたの言いたい事はわかった……貴重な意見だった。これからは皆、一丸となってサクリアーズとして精進いたそう」
ジュリアスは真摯に答えた。
「わかってもらえたら嬉しいよ。でね〜」
と先ほどまでとは打って変わったような猫なで声をオリヴィエは出した。
「気持ちも新たになったとこで〜、サクリア仮面の衣装も新しくぅ変えようよ? ね〜」
「オリヴィエっ! そなた、今までの真面目な意見は、その前フリかっ」
ジュリアスは額に青筋を立てんばかりに怒鳴る。
「チッ〜真面目に聞いてたオレらがバカだったぜ〜」
ゼフェルがそう言うとオリヴィエは、彼の鼻先に人差し指を突きつけながら言い返した。
「アンタたちのあの衣装ねっ、いつまであんなカッコしてんの? 一年前はあれが流行だったかも知れないけど、今じゃダサダサなんだよ〜。あのブカパンやルーズソックス、やめてよねっ」
「僕は最初から、こういうのってあまりカッコよくないと思ってたんだよね」
とマルセルは呟いた。
「なんだと、てめー。結構喜んで着てたじゃねーかよ! オレだってよ、あの衣装はイマイチかと思ったけど、せっかくランディが用意したんじゃねーか。今更ゴタゴタ抜かすなんて卑怯だぜ」
「ありがとうゼフェル。でももういいよ、確かにもう流行遅れかも知れないな、むやみに流行を追ってしまった俺が悪いんだよ……やっぱトラッドにすればよかったかも……」
「そんな事ねーって。オレ、けっこー好きだったぜ、動きやすいしさ」
「ゼフェル……ありがとう」
「なんだよ……照れくせーな」
見つめ合う二人の背後でオリヴィエが断固とした態度で言い放つ。
「なーにお耽美入ってんだかっ。今度はアンタたちの衣装はワタシが用意するからね」
「待てよ、どーせオレのカラーは灰色なんだろっ、ジジ臭せぇ」
「赤はオスカー様、青はリュミエール様、俺の色はどーせないんだ」
ランディとゼフェルは同時にそう言った。
「そこらあたりはちゃーんと考えてあるんだよ〜、ゼフェルのはグレーでも普通のグレーじゃないよ〜、サクリア仮面メタリック! ランディは白、赤、青のイメージカラーを全色使った、サクリア仮面トリコロールッ! ね、どう〜?」
「う……」
ゼフェルとランディは絶句している。
「嬉しいよね? 嬉しいよね〜〜っ」
オリヴィエは二人ににじり寄りながら言った。
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