土曜日の午後。人気のない第三ルアン中学の校庭の角にヤングサクリアーズはいる。

「ねー、ちゃんと言ったの? 絶望のチョコボくんに、今日の事?」

 とマルセルは校庭の土の上、木ぎれで落書きしながら言う。

「メールでちゃんと来るように言っておいた」待ち合わせの時間からは三十分過ぎている。

「やっぱ信じてもらえなかったのかな、君の事をヤングサクリアーズが助けてあげる……なんてさ」とランディも弱気になる。

「来る、ぜったいに来る、あいつも行くって返事くれたんだぜ、もう少し待ってくれよ」

 ゼフェルはそういうと鉄棒から一回転して飛び降りる。

「ヘタクソ」とランディは呟く。高い方の鉄棒につかまると、大きく体を降って蹴上がり車輪を繰り返す。

「見てろよー、俺の離れ技っ」と叫ぶと、見事なトカチェフを決める。

「わーすごーい、フィニッシュは何でしょうかランディ選手、あっ伸身のムーンサルトですっ、決まったぁ〜十点〜」マルセルが横ではしゃぐのを白い目で見ながらゼフェルは呟く。

「まだかなぁ……」

 とその時、校舎の影から少年がこっちをそっと見ているのにゼフェルは気づいた。ゼフェルはいちもくさんに駆けて行き、声を駆ける。

「絶望のチョコボか?」

「あの……僕」少年の目はそれを否定していない。

「オレさ、オレ待ってたんたぜ」

 ゼフェルと少年に気づいたマルセルとランディも駆け寄って来る。

「君をいじめているヤツらは来てるのか?」

「うん……ここじゃ目立つからって裏庭の方にいるんだ、でもやっぱり行かないで。あいつら僕が呼び出した事で生意気だって怒ってる、君たちの事もただじゃすまさないって言ってる」

「やってやろうじゃねーか」

「大丈夫だよ、俺たちはヤングサクリアーズなんだぜ」

「君たちサクリアーズと関係あるの?」少年はあまり信じていない様子である。

「主星の正義の味方サクリアーズは、なんていうか僕たちのお兄さんって感じかなぁ」

 とマルセルは言う。

「いや、上司って感じじゃないか?」とランディは言う。

「真剣に考えるなよ、んなことっ、口うるさい近所のジジィってとこだ」

 ゼフェルが言うと少年は気持ちがほぐれたのかやっと少しだけ微笑んだ。

「とにかく行こう」ランディが促すと少年は裏庭にヤングサクリアーズを案内した。

 そこには五人の少年が待っていた。

 


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