8 「あー司令とでも呼んでもらいましょうかね」



「見せたいものがある」と言って翌日ルヴァはサクリアーズに召集をかけた。場所はルヴァが管轄する図書館の地下にある一室である。簡素なソファと机があるだけの小部屋で、ルヴァは週末になるとここで夜遅くまで調べものをしたり論文を作成したりしていた。館や執務室と違って人気のないここは集中できるのだとルヴァは言った。

「穴蔵って感じ、窓もないし息がつまりそう〜」とオリヴィエは見るからに早く出たいと嫌がっている。

「確かに大の男が六人入るには小さすぎる部屋だ、座れもしない」とオスカーは窮屈そうに壁にもたれている。

「はいはい、じゃあ広い所にお連れしましょうかね、ちょっと壁からどいて下さい、オスカー」とルヴァは言うと壁際にある書棚から一冊の書物をグイッと奥に押し込んだ。すると、その書棚が、ずずずずすーっと移動し、さらに地下に降りる階段が現れたのだった。

「こ、これはっ?」たじろぐ皆を余所にルヴァは階段を降りる。

「話は中で。あー最後の人は内側にあるボタンを押して書棚を閉めてくださいよー」とルヴァは言った。長い階段を降りると鉄の扉があり、その横に小さなテンキーボタンが着いている。

 ルヴァがパスワードを打ち込むとドアは軽やかに開いた。ドアの向こうは先ほど間での狭い小部屋と違い数台のコンピューター、シンプルで機能的な家具、そして何より皆のドギモを抜いたのは部屋の角、ガラスで天井から仕切られた向こう側に置いてあるヘリコプターである。

「ルヴァ……これは?」ジュリアスたちはニコニコしているルヴァを見る。

「何から話せばいいでしょうかねー、あー、とにかく、サクリアーズの基地にしてもらえたらと思いましてね、ジュリアスがサクリア仮面ゴールドになったあたりから本格的に手入れし直しました」

「本格的に?」ジュリアスはその言葉に引っかかる。

「はい、この部屋はもともとありましてね、私がこの部屋を発見したのは守護聖になってまもなくの頃でしたから、もう随分昔ですねぇ、先々代、いやもっと前かも知れませんが、地の守護聖の中に遊び人がいらしたようですよ。この部屋いっぱいに、上の図書館には置けないような書物がどっさり残されてましてねー、調べてみると、ここから正門を通らずに外に行けるようにもなってたんですよー、夜な夜な聖地を抜け出していたようですねー」

「ひゃ〜地の守護聖にもそういう人がいたんだ、夜遊びは炎の守護聖専門かと思ってたよ〜」

 とオリヴィエが言うとオスカーはオリヴィエの足を踏みつける。

「あたた、図星でしょーがっ」

「それでまぁ、これは使えると思って、いろいろ手を加えてみたんですよ」

「ヘリコプターはどうしたのだ?」とクラヴィスは新品の美しいヘリを指さし言う。

「あれはねー、買ったんですよ」

「買ったって、あんな大きなもの搬入するとこなんか見なかったよ〜」

「その通りだ、聖地の周りには障壁が張られているのだ、ヘリを入れようとすれば一時それを解かねばならぬ、そしてそれには私の許可がいるはず」とジュリアスが言う。

「完成品じゃなくて未完成品を買ったんです、あー、まだ組み立てる前のを。で、ここで組立たんですよ」

「あ、少し前に正門にトラックが数台止まっていた事がありましたが、あれが?」

 とリュミエールは思い出す。

「そなた、あれは新しく注文した百科事典と書棚だと報告していたではないか」

「すみません、嘘ついて」

「でも、いいじゃない、ジュリアス。ヘリがあれば便利だよ、それにここを基地にすればあの汚いアパートまで行ってわざわざ着替える事もないんだしさ、ね」とオリヴィエはルヴァに向かってウィンクする。

「私はサクリア仮面として戦えないですから、ここにいて作戦を立てたり資料を集めたりしたいんです、いいですね」とルヴァはジュリアスとクラヴィスに向かって言う。

「ここにいる間は私もサクリアーズの一員ですからねー、あー、司令とでも呼んでもらいましょうかね、オリヴィエ、私にも素敵な衣装を作ってくださいねー」

「し、司令……」唖然としている皆を余所にルヴァは嬉しそうにしている。

 


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