ジュリアスの執務室……。

「そなた、昨晩はずっとここで寝ていたのか?」

「ああ、気がつくともう夜も白々と明けた頃だった、体が痛い、起こしてくれれば良かったものを」

「まさか朝までそのまま眠るとは思わなかったので。それより……先ほどのオリヴィエの意見、そなたどう思うか?」

「まさにその通り……だな、私の黒い衣装は前の守護聖の衣装の使い回しだ」

「ああ、私のも乗馬用の衣装だからな、しかしあのように言われては何とかせねばなるまい」

「しかし迂闊に人に作らせては私たちがサクリア仮面だと解ってしまう」

「私もそなたも裁縫などできぬしな……次元回廊で主星から遠く離れた星に行きサクリア仮面の衣装を注文すればと思うが、デザインを考えねばならぬ……そこでここは一つ、オリヴィエを仲間に入れてはどうか?」

「オリヴィエを?」

「ああ、あれはああ見えてもなかなか口は固い、近衛隊の制服のデザインをオリヴィエがしたのは知っているだろう」

 女王陛下近衛隊の制服……どんな男でもそれを着ると男前度五割増しと一時、聖地の側仕えをメロメロにしたほどのカッコイイ制服の事である。

「仕方がない……」

 クラヴィスが呟いた時、ジュリアスの執務室のドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」とジュリアスは凛とした声で答える。ノックした主はオリヴィエである。あまりのタイミングの良さにジュリアスは少したじろぎながら、「何用か?」と問うた。

「ワタシに用があるんじゃないかと思ってね、来たってワケ」

「どういう意味だ?」

「これ見て、こないだの新聞に載ってたサクリア仮面ゴールドの記事よ、この写真」

「これがどうかしたのか?」

「そ、このゴールドの着ているブラウスだけどね」

「回りくどいぞ、このブラウスが何だというのだ、普通の白いブラウスではないか」

「普通じゃないわけよ、これが。この襟、この肩のラインの絶品なカッティング、前身頃の芸術的なまでに細く統一されたピンタック、袖のボタン細工、新聞の写真だから細部までは解らないけど、このブラウス忘れもしないよ、三ヶ月前にオスカーと遠乗りに出掛ける時に着ていたジュリアスっ、貴方のブラウスよっ」

 オリヴィエはズイッとジュリアスの鼻先に人差し指を突きつけた。

「な、何っ」

「とっても欲しかったんだものっ、見間違いなんかじゃない、さっきサクリア仮面の衣装をこき下ろしてちょっち反応見せてもらったしね、ジュリアスがゴールドならシルバーはクラヴィスでしょ」

 オリヴィエは腕組みをして、クラヴィスとジュリアスの表情を伺っている。

「ジュリアス……ブラウス一枚で正体がばれてしまうか……まぁ、話が早くてよかったではないか」クラヴィスは鼻でせせら笑う。そうクラヴィスに言われて渋々、ジュリアスはサクリア仮面になった経緯を一通り述べた。そして衣装について協力して欲しい旨も。

「まかせて、超〜カッコイイのをバッチシ用意するよジュリアスはゴールド、クラヴィスはシルバー、ワタシのはパープルにしよっかな、ふふふ」

「何故そなたの分も衣装がいるのだ」

「あらぁ、衣装だけ作らせてワタシを活躍させないつもり? サクリア仮面パープル……ふふふ、いいでしょ〜、ダメならいいよ衣装も作ってあげないし、この事は陛下にチクらせてもらうわよ〜ゼフェルなんかに知られたら示しがつかないよねぇ〜」

 

 かくして……ここにサクリア仮面パープルが誕生した。


4へ
表紙