その頃、ジュリアスの執務室では……。

「ゼフェルのゲームソフトと攻略本が失せたことに付いて言い訳を聞こうか?」

 とジュリアスはクラヴィスを問いつめる。

「ほう? まるで犯人が私だと決めてかかっているようだな」

 クラヴィスはソファに深く腰掛け、半ば寝ころぶようにして座っている。

「私の目は誤魔化せぬ、そなたであろう?」

「何故、私だと解った?」観念したのかクラヴィスは開き直る。

「バカが、一度に沢山盗むから見つかるのだ、二つ三つにしておけば見つからぬものを」

 と言いつつ、ジュリアスは机の引き出しから、ゲームカセットと攻略本を取り出した。

「ふっ……あのホーリー・シャイニング・アタックの出所はそれか?」

 クラヴィスは軽蔑したようにジュリアスを見る。

「そういうことだ、で、そなたは何か見つかったのか、よい攻撃文句が? 『安らかに眠れ』ではあまりに安直というものであろう」

 勝ち誇ったようにジュリアスはクラヴィスに言う。

「適当なのを二、三見つけたので次回からはそれを使う」

「ならば、もうソフトと攻略本はゼフェルに返しておくがよい、ついでに私のも」

「お前はいつでもそうだ、そうやって人をこき使うのだ、夕べもお前が口上を述べている間、私がどんなに苦労していたか知るまい、そのあげく置き去りか」

 クラヴィスはついにソファに横になってしまい、恨みがましい目でジュリアスを見上げる。

「眠い、昨晩は主星から戻ってからゼフェルの館に忍び込み、それからずっとゲームをチェックしていたのでな、寝ていないのだ。しばらく寝かせてくれ」

 と言うが早いか、クラヴィスはもう既に寝息をたてている。

「執務中に眠るな、どうしても寝るなら自室にゆけ、クラヴィス、おいっ……どこででも眠れるとはなんという特技の持ち主だ……仕方のない……」

 ジュリアスはブツブツ言いながら、しばらく悩んだあげく執務室の続きの間にある私室から毛布を持参すると、クラヴィスに掛けてやった。

「仕方がない、私がゼフェルに返しておこう……」

 確かに昨日はクラヴィスの事なぞ考えもせずに振る舞ってしまった……と思うと少しだけ心が痛むジュリアスなのだった。


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