月の曜日、いつもの謁見の後、ジュリアスは緊張した様子で、守護聖の皆を呼び止めた。ゼフェルが、まだ何か話しがあンのかよ〜って不満顔してる。
「皆に承諾を得たいことがある……」
私は皆の反応が怖くて、ジュリアスの側に行きたくて、玉座から立ち上がりそうになった。側にいたロザリアが、小声で「大丈夫よ」と励ましてくれた。
「私は……、私と陛下は……」
ジュリアスが何を言い出すのか、皆はじっと彼の言葉を待っている。
「私と陛下は婚姻の儀を行いたいと思う……」
「コンインノギ……って結婚ってこと……だよ……ね?」
マルセルが呟く。ゼフェルがブツブツ言ってる。オリヴィエが私を見た。……と、きなり側に駆け寄って来て……。
「アンジェ〜よかったじゃないか〜、やったねぇ、ついに、あの堅物を落としたねぇ、ワタシも仲人として嬉しいよ」
「いつからお前、仲人なんだ?」
「オスカー、アンタは知らなかっただろうけど、女王候補だった頃、ジュリアスに告白しにいくアンジェに、エステしてあげたのはこのワタシなのさ、あの時は……って話しは長くなるから、以下省略〜」
「うわぁ、おめでとうございますぅ。陛下〜」
マルセルとランディも駆け寄って、そう言ってくれた。
「しかし、俺のお嬢ちゃんが結婚とはな……寂しいぜ」
「俺の、ってオスカー、ジュリアス様の、ですよ。アンジェリーク、どうかお幸せに」
リュミエールは、オスカーを少し押しのけてそう言った。
「まぁね、こうなるだろうとは思ってたけどさ」
オリヴィエがそう言うとゼフェルがすかさず言った。
「なんだよ、こうなるって自分だけ知ってやがったのか?」
「二人が愛し合ってるってのは感づいてたさ、けどさ、ジュリアスの事だもん、そっから先ってなるとさぁ、結局、こういう形を取らざるを得ない、と思ってたよ」
「ああ、そうか、なるほど。超有名人だものね、二人とも聖地で。朝帰りなんてできないし」
「おっ、わかってんじゃねーか、ランディ。そうそう、聖地にゃ、ラブホなんかないもんな。こういう時、不便だよな、いっそ一軒くらいあってもいいんじゃぁ……」
「バカだね、アンタ、面割れてンぢゃないの。たとえあっても利用できやしないよ」
「だからさ、完全、無人化で造るんだよ、掃除なんかもドロイドにやらせてさ、オレ、協力すっぜ」
「無人化なら、使えるかもしんな……」
「あ〜、オスカー、あなたまで。ゼフェル、話しが飛躍しすぎてます」
皆、異様に浮き足立っちゃってる。とても楽しそうで。ジュリアスは、騒ぎたててる皆に何も言えなくて、苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。その時、ジュリアスの後にいたクラヴィスが、ジュリアスを睨み付けて通り過ぎた。そして私の近くで、ぼそっと言った。
「よかったな、アンジェリーク。アレは睡眠中に日中のストレスを発散するタイプで、一緒に寝ると、うなされる声が五月蠅いと思うが、心しておけ」
その発言にたまりかねたジュリアスが、ついにキレちやった。
「十数年前の宿泊学習の時の事を持ち出すな。それに陛下に対してその口の利きようはなんだ。ここは謁見の間であるぞ」
ぷぷぷ、でも誰も知らん顔してる。オリヴィエは、パーティを開く話しで、リュミエールと盛り上がってるし、オスカーとゼフェルは、何か怪しい話しをコソコソ笑いながらしてるし、ランディとマルセルってば、二人のその話しを、下品〜とか言いながらしっかり聞いてるみたい。そしてルヴァは……、ああっ、ロザリアとお話ししてる……なんで、無意味に指先が触れ合ってたりするのっ。そうなのっ、そういうことだったのねっ。そして……ジュリアスは……。ジュリアスは、途方に暮れた顔をしてた。私と目が合うと、ギユッと眉間に皺を寄せてから、……笑った。
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