◆fortune smiles◆
今日はねー、とっておきのお話をしてあげるよ。 今の女王陛下が、まだ女王候補だった頃の事、彼女はね、とっても頑張ってたんだよー。何にでも一生懸命で前向きでね。 でね、彼女、アンジェリークは……ある守護聖に恋をしちゃったんだ。女王試験も終盤になったある日の曜日の朝早くに彼女はワタシの館に来て、思いつめた顔でさ……。 そう、「オリヴィエ様って素敵、愛してます……」って言わなかったってばさ〜とっても大事な用があるから、特別に綺麗にして欲しいんだって、頼みに来たワケ。 ワタシはすぐにピーンと来たよ。で、相手の好みに合わせてやるからってその守護聖の名前を無理に聞き出したんだよ。相手がランディやゼフェルなら可愛らしく、オスカーならちょっち大人っぽく、リュミエールなら優雅な感じ……ってね、ところが、彼女の相手は、なんとジュリアスって言うじゃないか! ま、なんとなーくわかってはいたけどね。 で、ワタシは、とっても綺麗にしてあげたんだよ。でも衣装はいつものスモルニィの制服のまんま。パックはしてあげたけどメイキャップはしてあげなかった。オリヴィエ印の高級ハチミツリップは塗ってあげたけどさ。ジュリアス相手なら小細工しても仕方ないもんね、あの人、結構、衣装とかには無頓着なトコあるしさ。 でさ、夕方、ワタシがお散歩してたら、遠くからアンジェリークがぶんぶん手を振ってワタシの名前を呼ぶじゃないか。ニコニコしながら彼女はワタシの元に走ってくる。 その後、夕暮れの公園のベンチでちょっと慰めてあげたんだけどね。結局、こうなるしかなかったって気もしたよ。 アンジェリークは、女王就任式典の前にワタシに言ったんだよ、 「でもさ、その頃になればジュリアスだって30歳! ハゲでお腹がデンと出てたらどーするよ?」 ワタシはそう言って背中を押してあげたんだ。あの時の彼女、とってもいい顔してた。 ☆★☆ あら、やだね〜、なんかシンミリしちゃってるね? そそ、結局ね……ジュリアスは自分に正直になっちゃったんだよ。 それも聞いてよ、アンジェリークが女王になって、たった半年後にだよ。 どこでどうなってあのジュリアスが女王陛下にそういう事言っちゃったのかは、女王陛下……アンジェリークったらクスクス笑って内緒にしてるから知らないよ。でもホント笑っちゃうよねぇ〜。ジュリアスってば、きっとアンジェリークの笑顔には勝てっこなかったって事だよね。 ふふふ、ね。ちょっといい話だったでしょ。だからねー、もし好きな人がいたら、それが誰であってもあきらめない方がいいと思うよ。女王候補だからって、恋をあきらめなくちゃならないって事はないんだよ。ほら、勇気だして、行っといで、ね。 −END− |