scene:7 【夢と祈り】
 
 二つの大陸が中央の島で繋がった朝。

「夢を見たの……ロザリア」
 ぼんやりとして青い顔をしたアンジェリークが言った。
「どんな夢だったの?」
「宇宙……いっぱい星があって。でも、ひとつづつ消えていくの。とうとう最後のひとつになってしまった時に、陛下がそれを食い止めるの。でも上手くできなくて、クラヴィス様に力を貸して貰ってらしたわ」
「それでどうなって?」
「クラヴィス様が叫んだの。この最後のひとつだけは残して置いて欲しいって。夢の中だけど、初めて聞く、とても大きいお声だったわ……。陛下は、最後の星を抱きかかえて眠って らっしゃるの……。 急にその女王様の意識と私は一緒になっちゃって、今度は私が、その最後の星を抱きしめていたわ。クラヴィス様は私の横に立っていて、最後の星が消えないようにずっと、祈ってらっしゃった……随分、抽象的な夢」
「いいえ、もしかしたらそれは本当の事かも知れなくてよ」
「え?」
「そんな風に陛下はこの宇宙の星々を抱きしめて守ってらっしゃるのかも知れない。守護聖様は、そんな陛下をお守りしている存在」
「クラヴィス様も陛下も、とてもお辛そうだったわ……」
「でも、最後の星は残ったのでしょう?……それは希望の象徴なのよ。そしてそれは、次代である貴女の事なんだわ」
 強い……とアンジェリークは、ロザリアをそう思う。悲しいと思った夢の最後を、希望へと繋げて考えるその強さに何度も励まされてきた、と思う。
「ね、アンジェリーク。わたくしも貴女を守る存在になるわ。そういう意味で補佐官になるわ」
 ロザリアは、手を差し伸べた。
「ありがとう……」
「貴女を守ることは、この宇宙を守ることでもあるのだもの、さあ」
 ロザリアは、アンジェリークの手を引っ張って立ち上がらせた。
「いってらっしゃい、陛下とディア様がお待ちよ。しっかりね、ちゃんとお話、聞いてらっしゃいよ」
 ロザリアがそう言うと、アンジェリークはクスクスと笑ってしまった。
「あら? なによ? 今まで不安そうにしていたくせに」
「ごめんなさい。ロザリアは、男の人だったら、絶対、光の守護聖になってる……と、ふと思って。すっごい似合いそう、ジュリアス様の衣装とか。二人とも雰囲気も似てるし」
「まあっ、あんたって子は! 今にも泣き出しそうな顔をしていたくせに、そんな想像だけは逞しいわね」
 初めて逢った時のアンジェリークの、女王候補としての自覚のなさにあきれた時、思わずポロリと口をついて出てしまった言葉と同じ言い方をして、ロザリアは彼女を見た。
 そして二人は、肩を抱き合って笑った。笑いながら、涙が頬を伝う。
「バカね、何を泣いているのよ」
「ロザリアこそ」
「泣いてなんかいなくてよ」
「嘘ばっかり」

 かけがえのないものがまた、ひとつ増える……と泣き笑いしながら、アンジェリークは思う。
 

 

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