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 ウォン・セントラルカンパニーの翻訳部係長、レイモンド。彼は主星外交官の家に生まれ、幼い頃から各惑星を転々として育った。様々な星域の文化を吸収し育った彼は、生まれつきの美貌と相俟ってエキゾチックな雰囲気を持った滅多にいない美少年と成長した。レイモンドが、ちょうどハイスクール卒業の頃、彼の父親は惑星ザラメの大使館に移動となり、そこで大学に進学することとなった。ザラメは、主星以上にリベラルな風習を持つ星だった。宇宙一、人種、性差による偏見も差別も全くない星だったのだ。懸命なる読者の皆様はもうお判りかと思うが、つまりレイモンドは惑星ザラメで、心置きなく男からモテモテだったのだ。最初は些か強引に成された行為であったのだが、元々そういう容姿をしていて、素養もあったのだろう。春の訪れと共に、蕾がアッという間に開花するように、あっさりとソッチの人になったのだった。大学卒業後の就職先に、彼が主星の企業を選んだのは両親からの自立……というよりも、一ダースほどの元カレの精算の意味もあったのだった。外交官の息子であり、主星系惑星の主な五つの言語を完璧にこなす事に加えて 、その男前さで、就職先はよりどりみどりだったが、彼は、ウォン・セントラルカンパニーの翻訳部を選んだ。

 自由な社風だと聞くしね。それに……チャーリー・ウォン、ちょっと興味あるんだよね……ふふふ、と思ったのだった。実際に入社してみると、チャーリー・ウォンは、思った以上にイイ男だった。経済力も見た目も申し分なく、気さくな性格。その上、無礼講の新入社員歓迎会で、好みのタイプは……と問われてこう言ったのだ。

「俺はどっちか言うと女性の方がエエかな……と思うけど、男はアカンわけやないでー。実は……酔ったはずみやけど経験はあるねん〜、何も覚えてないけどなーー、アハハハ。女性は知的キュート系、男は美人が好みや。そやし我と思う者は、どしどしアタックしたってや〜。ふられてもエエやん、そこは恨みっこなしやでーー」
 
 チャーリーがそう言うと、新入社員一同がドッと湧き、黄色い歓声が幾つも上がった。その中で、“ふうん、それなら遠慮無く落とさせてもらおうかなー”とニヤリ……と笑 った彼なのだった。

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