『誰も知らないウォン財閥の社史』 

 

 かくして、8月16日のジュリアスの誕生日。チャーリーは、この日に基準を合わせて夏休みを取った。彼の第一秘書であるジュリアスも当然、休みである。 二人は、アンダルシアの向日葵畑の中にいた。

「ありがとう、チャーリー……、目頭が熱い」
 一面の向日葵を目の前に、ジュリアスは感動していた。
「だが、しかし、この場所が全部、私名義だというのは……」
 困った顔をしたジュリアスに、チャーリーは、少しはにかんだように笑った。

「本当は派手なことするのは真意やないんです。この土地、開発対象になってしまうかも知れへんって聞いて、手に入れておきたかったんです。ここをジュリアス様と俺の永遠の向日葵畑にしておきたかったんです」
 精一杯の余所行きの声で、チャーリーは言った。
「ジュリアス様の誕生日やのに、まるで自分の為のようやなぁ」
「?」
「俺はこの風景を忘れない、貴方に似たこの花の中で、貴方と共にあるシアワセ……」
 ちょっと寒……と思いつつもチャーリーは、穏やかな顔をしているジュリアスに満足して言った。
「チャーリー。そなたにはいつも驚かせられるな」
「ジュリアス様は、向日葵の花言葉、知ったはりますか?」
「いや……」
「たくさんあるんです。情熱、希望……、一番、多かったんは、あなたを見つめ続けるとか、あなたは素晴らしい……」
「なるほど……」
「俺の一番気に入ったんは、いつもあなたと一緒にいる……です」
「チャーリー……」
「ジュリアス様……」
 向日葵畑の中で、見つめ合う二人である。

(よっしゃ〜、このまま、ここででも俺的にはOKや。そういうこともあろうかと畑丸ごと買うたんや〜。青天でも、自分の土地やから、ナニしても問題あらへん〜)

 チャーリーのフケツな下心を知る由もないジュリアスは、彼のネットリと熱い視線から、顔を逸らすと、いつもにもまして潔癖なまでの高貴さで、大輪の向日葵とその向こうに広がる青空を 、清々しい気持ちで眺めていた。

(あらら……なんや、もう……そんな気分違うみたい……)
 
 結局、向日葵畑でのナニは出来なかったが、その夜、アンダルシアのホテルのベッドの上は、かなり情熱的なものであったのだが。 もちろん、それは、貴女の心の中で……。お約束。


■NEXT■


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