◆もしも……◆

【前 編】

 

「新しい光の守護聖が来る……そなたに後を頼みたい」
 とジュリアスは穏やかに言った。内心では、クラヴィスは動揺するだろうか……と危惧しながら。それを、「断る」とクラヴィスは事も無げに言った。その言葉にジュリアスは胸が詰まる。
(何故こうまでも、この男は!)
 だが、しかし争いたくはなかった。声を荒げる事はしたくない、真摯に説明すればわかってくれるはずと。

「お前がいなくなって私が年長のものとなり、皆を率いて行くのは当然だとは思うが…」
 クラヴィスは口ごもる。
「判っているなら何故」
 ジュリアスの言葉は耐えきれずきつくなる。しかし、クラヴィスは答えず、だだじっとジュリアスを見つめた。(わかるだろう、お前なら)と。

「そなたもなのか」
 ジュリアスは絶句しながら尋ねる。クラヴィスは小さく頷くと静かに微笑んだ。
「いつ、気づいた?」
「昨夜……星を見ていて感じた、この宇宙のどこかで……と」
「そうか……私の方が少し早いな……たとえ短期間とは言え、やはりそなたに後を頼みたいのだが」
「いや、お前と同時にここを去ろう、同時に新しい光と闇の守護聖を召還した方がよいと思うのでな、時間差はそれほど問題はないだろう」
 クラヴィスが何を言わんとするか、ジュリアスには判っていた。

「そうだな、幼き者同士、同時に召還した方がいいだろう」
「ああ、きっと助け合って生きてゆくだろう」
「先に来たものとして弱みを見せたくないと、幼心に思った事が何度もあった」
 ジュリアスは素直に呟いた。
「ああ」
(この男にはかなわないところがどうしてもある)
とジュリアスは改めて思う。


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