砂を踏む。
その軋む感触をクラヴィスは、目でも確かめる為に俯いた。故郷に戻ってきたという感覚はあまり無かった。
以前、この大地を踏みしめたことがあるという感覚だけが、クラヴィスの記憶の片隅に微かに残っていた。

 ジュリアスは、その時、空を見ていた。照りつける大陽と、乾いた色の山脈の彼方を、この見知らぬ土地の総てを、推し量るように見回していた。
 二人は、やがて目の前に聳える尖塔に目を移し、ただ無言でその宝珠のある頂華を見上げた。午後の強い日差しが、銀色のそれに反射して輝いていた。

 ジュリアスとクラヴィスを包んでいた次元回廊は、いつの間にか消失し、突如としてそこに存在することになった彼らは、これまでと同じ様に、ただ静かに目的の場所に向かおうとした。

「最後なのだな……」
 とジュリアスが呟いた。
「ああ」と答える代わりにクラヴィスは、目を伏せた。

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