その棺の中には、ジュリアス様が眠っていた。
俺はその傍らに傅いて祈りを捧げた。
いや、祈りなどではない。今更、誰に何を祈るというのだ?
ジュリアス様は還らない、ただその事実だけがそこにある。
俺はいつまでもその屍の側にいたかった、永遠に。
だから、ずっと祈っているふりをしていただけだ。
白い死装束が、光の守護聖の衣装に見えるのは何故だろう?
ジュリアス様にすがって泣きたかった。
そうすれば心に鬱積していく悲しみも少しは紛れるものだと解っていたが、死して尚、気高さを失わないジュリアス様の固く閉じられた唇から「みっともない真似はよせ」と叱咤されるようで耐えていた。
鐘の音が響きわたる。もう行かなければならない。
その白い顔に最後の別れをすると俺は、棺の蓋を閉じた。
純白の棺の蓋に彫られた金文字の名前を俺は指でなぞった。
JULIOUS、JULIOUS、JULIOUS……
何度も何度も繰り返し、なぞり続けた。
胸を締め付ける感覚とともに俺は目覚めた。窓の外はまだ暗い。
辛い、嫌な夢だった。
ジュリアス様が聖地を去られてから、ずっと俺を捉えている悪夢。
ジュリアス様に逢いたかった。どうしようもなく逢いたかった。
明日、貴方に逢いに行こう。何があっても。
貴方のいる緑の大地を、俺はもう一度、ともに駆けよう。
貴方の乗る馬の後に俺は控えて、何処までも何処までもついて行こう………。
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