◎一九二五年・オリヴィエとリュミエールのクリスマスイブ◎
 
この物語は、『水夢骨董堂細腕繁盛記』冬の章の続きとしてお読み下さいませ。

 

 「はーっ」
 とオリヴィエは溜息をついた。さっき美美に無理矢理飲まされた男宝即立感服丸が、今頃になって効いてきたのである。
「う〜」
 オリヴィエは身悶えしながら薄明かりの中、時間を確かめた。午前十二時過ぎ。今から四馬路に出れば、野鶏はまだ買える。いやクリスマスのこんな時間に売れ残っている野鶏なんて、とんでもないのばっかりだ……とオリヴィエは自分を言い聞かせた。
「は〜、仕方ない。自分でするしかないか〜くー、虚しい……」
 オリヴィエは、隣で寝ているリュミエールを起こさないようにそっと起きあがろうとした。二人が使っている寝台は正真正銘の清王朝流出の品で、普通の寝台の倍ほどもある立派なものである。特に冬は暖かいので、この寝台を二人で使う事にしているのである。
「うーん……」
 リュミエールはクルリと寝返り、オリヴィエの側に寄って来た。
「こら、もー、あっち行けったら〜」
 オリヴィエはなんとかリュミエールを退かそうとする。窓から月の光が入り込みリュミエールの銀青色の髪と白い顔を映し出した。
「は〜綺麗だ……リュミエールが女ならねぇ……」
 オリヴィエはリュミエールの髪をそっと撫でて思った。ドキン……とオリヴィエの一部分が脈打つ。
「げ……リュミエールをオカズにしちゃうとこだよ〜、く〜情けない〜」
 そんなオリヴィエの様子などまったく知らずにリュミエールは小さく何か呟いて、またオリヴィエにすり寄った。
「リュミエールでもいいや、オカズ〜。いや、もーいっそのこと主食にしてやろうか〜」
 オリヴィエはこの時はまだ冗談で、言ったのだが……。オリヴィエはなんとか体勢を立て直し起きあがった。布団から抜け出ようとしたオリヴィエは、リュミエールの寝間着が露わにはだけているのを見て、また悶絶した。
「バカ〜、だから浴衣着て寝るのは止めろって言ってるのにぃ〜。あ〜コイツってば男のクセになんでこんなに足がツルツルなのさ〜」
「うーん、やめて下さい……オスカー……でも接吻くらいなら……」
 とリュミエールは先ほどまでの事を夢見ているのか、寝言を言った。
「えーーーーーい、もう〜やったる!」
 オリヴィエはその寝言を聞くと、リュミエールの上に覆い被さり、白い首筋に接吻した。 思いもかけない感情がオリヴィエの中を駆けめぐる。リュミエールに対する愛おしさでオリヴィエの胸は一杯になる。
「リュミエール……ごめんね、でももう我慢できない。いただきます……」
 とその時……。

 
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